この物語は正義感に満ちた一人の男の物語です
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◇ まえがき

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川北町二(かわきたちょうじ)作
小説 めもるの奇跡
まえがき

ある小さな町で生まれた一人の男の子は、3歳の時、原因不明の病気にかかってしまった。広くもない部屋の古ぼけた畳に、赤茶けたタイヤのチューブが置かれていた。そのチューブを覆うようにして座布団が置かれ、その上で男の子は辛うじて息をしていた。自分の排泄した大便を口に入れ周囲を慌てさせた。と同時に、あの子はとうとう脳を侵されてしまったのではないかと、まことしやかに町中に流布され始めた。あれこれと手を尽くした甲斐もなく、この小さな命が閉ざされようとし、葬式の日程まで囁かれていたある日、息子の命を何としてでも救うのだと、血眼になって駆けずり回っていた父親の持ち帰った薬が奇跡を呼んだ。

やっとの思いで命を取り留めたこの幼児が、天才だ奇才だとか言われ、ついには神童と呼ばれながら成長していく最中に、家族に大きな不幸が襲いかかった。そのことが、この少年の人生に、深く重い傷となって苦しめ続けた。
だが青年となったこの少年は、その傷を乗り越えるために、懸命になって生きることを決心した。

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